デジタルカラーの問題点
デジタル画像を扱うとき、最も気にかかる問題といえば、最終的にイメージどおりの色が出てくれるかどうかだろう。画面では見分けやすかった組織の色が、印刷すると似た色になってしまう。自分のモニタでは自然に見えた色が、相手の画面では鮮やかすぎる。メディカルイラストの制作でも、こうした違いに出会うことがある。
前回は、色の表し方と、照明やモニタなどの制作環境についてお話しした。今回は、画像が完成して読み手に届くまでの流れを追ってみよう。
色の受け渡しを支えるのが、カラーマネジメントシステム(CMS)である。画像や機器の色の特性を記録したICCプロファイルなどを使い、受け渡し先に合わせて色を変換する。現在では、OSや多くの制作ソフトに取り入れられている。
機器を基準に合わせて調整するキャリブレーションと、その機器の色の特性を記録するプロファイル作成は、組み合わせて行われることが多い。この仕組みに、実際の表示や印刷を目で確かめる作業を合わせると、色を管理しやすくなる。
色が変わる場所をたどる
制作の流れは、大まかに次のようになる。
- 元となる資料を用意する。 模型や標本、手描きの原画、写真などを用意する。最初からソフトで描く場合もある。
- 資料をデジタル化する。 カメラで撮影したり、スキャナで取り込んだりする。
- モニタで確認する。 取り込んだ画像を表示し、色や細部を確かめる。
- 描画・編集を行う。 資料をもとに描き、必要な色分けや補正、文字の配置を行う。
- 掲載先に渡す。 印刷物、スライド、ウェブなど、用途に合わせて書き出す。
撮影では照明やホワイトバランス、スキャンでは読み取り設定や自動補正によって色が変わる。モニタでは表示設定やプロファイルが、印刷ではインクや紙が見え方に影響する。

また、同じ機種でも調整状態や使用年数によって差が生じる。色を確認する作業は、機器の表示が安定してから始め、設定も定期的に見直したい。
実物の色を伝えたいときは、その色に近づけることが目標になる。一方、説明のために色分けした医学図では、各部分の区別や強調の関係が、掲載先でも伝わることが大切だ。例えば、隣り合う組織の色が似てしまうなら、明るさの差や輪郭線、ラベルも使って区別しやすくする。
カラーマネジメントの進め方
「全体の工程を通して管理する」。これが、色の問題を減らす基本である。

いつも同じ印刷会社と仕事をし、使う紙や入稿条件を共有していれば、結果を予測しやすい。担当者と相談でき、以前の校正刷りも手元にあれば、修正の判断もつけやすくなる。
しかし実際には、出版社や制作会社、印刷会社が案件ごとに変わることも多い。そのたびに、少しずつ異なる条件で仕事を進めなければならない。
デジタル化の利点は、目的に合った人や機器、ソフトウェアを組み合わせられることにある。その自由さを生かすためにも、受け渡しに必要な情報をそろえておきたい。
受け渡す前に確認すること
制作の早い段階で、次の点を掲載先に確認しておくとよい。
- 何に掲載するか。 印刷、スライド、ウェブなどの用途と、仕上がりの大きさ。
- どの形式で渡すか。 ファイル形式、RGBかCMYKか、指定のICCプロファイルの有無。
- 誰が色を変換するか。 制作者側で変換するのか、出版社や印刷会社に任せるのか。
- 何を見て仕上がりを確認するか。 PDFによる確認なのか、実際の印刷条件に近い色校正を行うのか。
「印刷用だから、とりあえずCMYKにする」と決める前に、入稿条件を確認しよう。RGBでの受け渡しを求められる場合もある。変換する場合は、編集用の元データを残し、入稿用の複製を作ると、その後の用途変更にも対応しやすい。
ICCプロファイルを埋め込める形式では、掲載先の指定に従って、画像の色を表すプロファイルも付けて渡す。別のプロファイルをむやみに割り当てると、同じRGBの数値が別の色として解釈され、見え方が変わってしまう。色空間を変更するときは、ソフトの「プロファイル変換」など、色を変換する機能を使う。
自分のプリンタで確認する場合は、用紙の種類と印刷設定を合わせる。制作ソフトとプリンタドライバの両方で色補正をかけると、意図しない色になることがある。どちらに色の管理を任せるかを決め、その設定手順に従おう。
大切な色は、仕上がりで確かめる
印刷条件のプロファイルが用意されていれば、ソフトの校正表示を使って、印刷時の色の変化を画面上で予測できる。これは、色分けが似通ってしまう部分などを早めに見つける助けになる。
重要な色を判断するときには、必要に応じて実際の条件に近い校正刷りも確認したい。手元のプリンタで出したものは確認の助けになるが、本番と紙や印刷方式が違えば、仕上がりにも差が出る。
画面向けの画像も、可能なら別の端末や掲載先で表示してみよう。細い線やラベルが読めるか、色分けが保たれているかを、実際に使う大きさで確かめる。
すべてを一人で調整しきる必要はない。大切なのは、画像がどの工程を通るかを知り、重要な点を相手に伝えることである。色の数値とともに、図が伝えようとする内容を共有することが、仕上がりを安定させる助けになる。
参考文献(原掲載時)
- 『DTPプロのためのカラー&スキャン基礎マスターブック』ライノタイプ・ヘル著、猪俣裕一監修、エムディエヌコーポレーション
- 『クリエイターのための印刷ガイドブックDTP入門編』コマーシャル・フォト・シリーズ、玄光社
- 『デジタルスキャニングへの招待』日本アグファ・ゲバルト(株)(原稿では絶版と記載)
